散歩中

幼い頃

まがり角で大きな野良犬と見事に対面し

追いかけられた。

近所では有名な泣き虫だった僕は

この時もまた

大声で泣きながら全速力で逃げる。

その切羽詰まった速さに

犬も途中で追いかけるのを

あきらめ、スピードを落とした。

しかし僕はそれにすら気づかず

永遠と走り続けた。

あの時の速さがあれば

きっと運動会の徒競走では一位だっただろう

と、いつも悔やんだものだ。


それからというもの

犬が大嫌いだった。

触るのも苦手で

極力、触れ合うのも

避けてきた。

それが今はどうだろう

何故か犬に好かれる事が多くなり

僕は大きな犬と

背の高さ程の草原に

まっすぐ伸びる砂利道を

一緒に走っている。


走りながら

大きな犬に追いかけられた自分と

大きな犬と共に走っている自分が

ダブり、おかしくなって

思わず口元が緩んでいた。