ランドリーのアンドウさん

ほぼ毎日のように通うコインランドリーがある。

前は洗濯機が回ってる間に部屋へ戻って掃除をし、

終わる頃に取りに行っていたのだが

何回か服が盗まれる事件が起こった事もあり

洗濯の時間はノートを書いたり、勉強をしたり、本を読んだり

色々と作業をする時間となった。

作業をしてるといろんな人達がこのランドリーにやって来る。

仲良く洗濯するカップル、

音楽を聴いて足の親指だけノッテる学生、、

犬の散歩がてらに来るおばさん、

これでもかと大きなアクビをするおじさん、

と様々。

でも不思議とランドリーは静かで

時間を追っているはずなのに時間が止まっているかの様で

おかげで作業がよくはかどる。

そしてこのランドリーには主がいる、

その名はアンドウさん。

アンドウさんは一時間置きにランドリーの

様子を見に来ては

いらっしゃいと皆に声をかけ

何とも言えぬ

美しい年輪の入った笑顔を

向けてくれる優しいお爺さん。



ある日、僕とアンドウさんは

初めて長々と話をした。

話を聞けば

アンドウさんは歴史の先生だったそうで

日本各地、世界各地をまわった話を

してくれた。

アンドウさんと話してると妙に落ち着く

アンドウさんとの話には

僕の嫌いな若者のノリを求めたモノはなく

まるで日本昔話のような口調で

優しく話してくれるからだろう。、

気付けば乾燥機はとっくに止まっていて

外は人通りも少なかった。

帰り際、

アンドウさんは僕に

「今度またゆっくりと話をしながらお茶でもしましょう」

と言って

美しい年輪の入った笑顔を

僕に向けてくれた。